ブータンが保有金をソラナでトークン化 国家資産のデジタル化が始動

国家保有の金を裏付けとするトークン発行でデジタル戦略を前進

ブータン政府は、物理的な金準備を裏付けとするデジタルトークン「TER」をソラナ（Solana）ブロックチェーン上で 発行した 。

Gelephu Mindfulness City is launching TER, the world’s first sovereign-backed, physical gold-backed digital token, on Dec 17, 2025. Built on Solana, issued via DK Bank, and powered by Matrixdock tech, TER brings Bhutan’s “Treasure” on-chain with full transparency.… pic.twitter.com/HmJVGh4qPB

— gmcbhutan (@gmcbhutan) December 11, 2025

国家資産を基盤としたトークン化の取り組みは、同国が進めるデジタル戦略の新たな段階を示している。

ブータンの特別行政区である GMC （ゲレプ・マインドフルネス・シティ）は、ソブリン金（※英国の1スターリング・ポンドに相当する金貨）に裏付けられたデジタルトークン「TER」をソラナネットワーク上で発行した。TERは、保管された現物の金に1対1で裏付けられており、限定的な普及を前提に段階的な運用が進められている。

現物の金（Gold）は、ブータン王立通貨庁の規制下にある同国初のデジタル資産銀行 DK Bank が保管する。DK Bankは、TERトークンの独占販売業者および保管人としての役割も担う。技術面では、GMC認可の金融サービスプラットフォームであるMatrixdockが、現実世界の資産をブロックチェーン上でトークン化するインフラを提供している。

国家資産のデジタル化が示すブータンの狙い

GMC関係者は、TERの発行について、透明性、持続可能性、長期的な管理というブータンの価値観に沿った責任あるイノベーションであると説明している。TERは当初、主にGMC内での利用を想定して設計されており、金に裏付けられた安定価値トークンとしての実用性を検証する狙いがある。

また、TERはデジタル時代における通貨インフレへの対応策としての側面も持つ。購入や保管の仕組みは、従来の金融機関を通じた金取引と同様に、利用者が安心して扱える形を意識して構築されている。

仮想通貨と決済インフラの整備が進むブータン

ブータンは近年、決済システムの近代化や観光産業の振興を目的に、仮想通貨やブロックチェーン技術の導入を進めてきた。

DK BankやBinance Payとの提携を通じ、観光客向けに仮想通貨決済を提供しており、現在では1,000社以上の事業者が仮想通貨による支払いを受け入れている。

デジタル基盤の上に金を組み合わせる試み

ブータンはブロックチェーン分野の新興国ではなく、水力発電を活用したビットコイン（Bitcoin/BTC）のマイニングを2019年から行っている。国家準備として5,984BTCを保有しており、仮想通貨を戦略的資産として位置付けてきた。

今回のTER発行は、こうした既存のデジタル基盤の上に、金という伝統的資産を組み合わせる試みといえる。キルギスが金準備に裏付けられたトークンを発行した事例と同様に、国家が保有する実物資産をデジタル化する動きが広がる中で、ブータンもその流れに加わった形だ。